ポンプの周辺知識のクラスを受け持つ、ティーチャーサンコンです。
「防爆電気機器」は現在、可燃性物質を扱う石油関連や化学業界などで広く使用されており、このような業界で活躍しているポンプの駆動機には、防爆モーターや電気を使わないエアモーターなどが使用されています。今回は、防爆について説明します。
防爆の歴史は、100年以上前の石炭を採掘する炭坑での爆発事故から始まります。当時、坑内で使用する電気機器や配線の火花で、炭層から発生するメタンガスに着火し、爆発事故を発生させていました。
事故を教訓に防爆構造が研究されはじめ、1911年にイギリスで、1912年にはドイツで坑内用電気機器を防爆構造にすべきという規則が制定され、その後、炭坑以外の可燃物を扱う一般工場でも世界的に広がるようになりました。国内では1955年に「工場電気設備防爆指針」が労働省(現在の厚生労働省)より発表され、防爆構造の電気機器が使われるようになりました。
防爆は「爆発を防ぐ」と書きますが、どのような状況で爆発するのでしょうか?爆発は1)可燃性ガス・蒸気、2)空気(酸素)、3)点火源 の3つが揃ったときに発生します。「爆発を防ぐ」方法として、以下の3段階があります。基本は防爆構造ありきではありません。防爆構造はあくまで最終手段です。
防爆構造には主に以下のような種類があります。
機器が爆発に耐えるほど丈夫でかつ、外部に火炎を漏らさない構造。
機器内へ空気などの保護ガスを送風又は封入することにより、機器内部へ爆発性ガスが侵入しないようにした構造。
通常の機器よりは危険場所で使用することを考慮された構造。機器が正常に運転されている場合にのみ防爆性が保証される。異常にならないよう注意が必要。
ソフト的に点火源にならないよう回路設計した構造。理論的には覆いも不要で、ほとんどが弱電回路です。
その他には、油入防爆構造、特殊防爆構造などがあります。
危険な場所を以下のように分類しています。基本的には事業者にて分類が行われます。
国際分類表示Zone0、米国分類表示ClassⅠ・Division1。ガソリンタンクの上など、爆発性雰囲気が連続して存在する場所。
国際分類表示Zone1、米国分類表示ClassⅠ・Division1(0種場所と同表示)。フタの開閉や安全弁の動作などで、正常状態でも爆発性雰囲気が存在する場所。
国際分類表示Zone2、米国分類表示ClassⅠ・Division2。配管の腐食、パッキンの劣化、換気装置が故障したときなど、異常状態で爆発性雰囲気となる場所。
危険場所によって使用可能な防爆構造が決まってます。
本質安全防爆 | 耐圧防爆 | 内圧防爆 | 安全増防爆 | |
---|---|---|---|---|
0種場所 | 使用可 | 使用不可 | ||
1種場所 | 使用可 | |||
2種場所 | 使用可 |
安全増防爆構造は、後述の「構造規格」では1種場所での使用は不可でしたが、近年の技術向上により「防爆指針」では1種場所でも使用可能となっています。
防爆機器は検定を受けたものであることを求める内容
危険場所では防爆機器を使うように求める内容
規格は上記1)の法規より1969年の「電気機械器具防爆構造規格」(通称:構造規格)が制定されていますが、近年は国際規格との整合問題より2008年に「工場電気設備防爆指針」(通称:防爆指針)が新たに制定されています。「構造規格」と「防爆指針」は一部異なる部分もありますが、国内ではどちらも使っても良いことになっています。
IEC(国際電気標準会議)が防爆電気機器についてIEC60079を制定しています。最近では新しい技術に対応した防爆規格や粉じん防爆に対する規格も整備されつつあります。日本では2006年にIEC防爆電気機器規格適合試験制度に加入しましたが、IEC規格品でも国内で使用する場合には、検定申請と検定試験を受けなくてはいけません。
主にはポンプを駆動するモーターが対象機器となり、耐圧防爆や安全増防爆が選定・設置されています。注意点と選定のポイントを記します。
モーノポンプは可変速装置としてインバーター駆動する事が多いため、インバーター駆動する防爆モーターを選定する場合があります。この場合、以下の注意点があります。サーボモーターでも同様です。
モーターとポンプをプーリ・Vベルトで接続する場合がありますが、プーリとVベルトは摩擦により動力伝達しているため、摩擦による静電気が着火源となる可能性があります。そこで、Vベルトは静電防止用のレッドタイプ、又はウェッジベルトを選定します。
そろそろ時間ですね!最後にまとめをしておきましょう!!