F1メカニックとして世界を渡り歩き、
第一線でその腕を振るってきた津川哲夫氏。
彼が経験上痛感しているのは、
いつの時代もどの地域でも「オリジナルである」ことの強さ。
『オリジナルなものづくり』を追求する企業姿勢に共鳴し、
今回のヘイシン探訪が実現した。
ヘイシンの工場と展示会を見学した津川さん。
エンジニアたちと直接話がしてみたいと言い出した。
そこで、座談会を催すことに。出席したのは、
技術部リーダーの山根哲男と杉野祥弘、そして技術部長の市田邦洋。
和やかな雰囲気のなか、4人の話が始まった。
F1のチームに、メカニックは何人くらいいるのですか?
僕がやっていた頃は1台のマシンに2人、だから1チームで計4人。今はパーツごとに分業されているから、スタッフの数はもっと多いよ。
1台に2人しかいない?! ということは、マシンの構造すべてを熟知していなければならないですよね。
そう。ギアボックスをバラし、オイルポンプをバラし、電気系統を剥ぎ……なんて、細かいことはすべて自分で。そのおかげで、自然にマシンの構造を学ぶことができたんだろうね。
一人でやると失敗することもありますが、それがいい経験になり、技術や理論が早く身につくというメリットもありますよね。それは、うちのものづくりでも同じです。
そういえば、1台のポンプを一人で組み立てていたよね。
はい。組み立てのような製造部門だけでなく、技術部門でも案件ごとに担当者が一人でやり遂げるのが基本になっています。
だからこそ、ポンプのすべてを理解している必要があるんですよ。トラブルのときはもちろん、製品の改良、あるいはお客様のご要望に応えたりするときも、全体を知っていないと対応できないですから。
全体を理解したうえでの分業化や専門化ってわけだ。
はい。専門化すればその分野の知識だけは深くなりますが、全体を見られない。だから当社では、部門を横断する仕組みを通じて、俯瞰の視座をもった人間になれるよう教育しています。
へぇ! 具体的には?
開発に携わる者を固定せず、案件ごとに部門をまたいだ開発プロジェクトを組んで、柔軟にメンバーを変えています。技術的な社内研究会にも参加してもらい、自分がふだんやっている業務と、なるべく異なることを経験させています。
なるほど。それはとても大切なことだねぇ。
技術者が現場に赴く機会も増やしています。製品がどんな場所でどんなふうに使われているか、あるいはどういう部分がお客様に喜ばれているかを肌で感じないと、次のものづくりにつながらないかな、と。
現場に出ると、お客様から「ヘイシンさんのポンプで、こんなことできない?」と聞かれることがあります。難しい課題にぶつかったりしますが、やれることはできる限りやってみます。そうすると、新しい可能性を発見することがあるんですよ。
お客様は神様。というよりも、一緒に進歩するパートナーだもんね。刺激しあって、どちらも発展していけるような関係が理想だな。
ヘイシンも、ようやく中堅のポンプメーカーになりました。でも、今までと同じことをやっているだけではダメ。まだ成長の“のりしろ”が残っていると思いますし、自ら可能性を切り開いていきたいです。
“きょう止まっていると、あすは2歩遅れてしまう”という言葉もあるからね!
うわっ、重い言葉だ。
みんなに教えてあげよう(笑)